乳と卵 - 川上 未映子

関西弁の文体が当初馴染めず、なかなか読めず、すこしだけいらついたがそれもすぐに慣れ、頭のなかにすこんと入りました。うん、頭でかいかも。
饒舌であるが、見事なバランスで描写する、そう描写が素晴らしかった。

耳も頭も巻子の話に集中させてはみても、結局いった誰の、何のことをちゃんと喋っているのか、が、いくらどれだけ集中してみても、時間が経てば経つほどわからなくなってゆく始末。
P.13

耳も頭も両方を集中させた、本来別々働かせることなどできないのかもしれないが、それでもあえて耳も頭も集中させても分からなくなってゆくのである。

ひらがななどでも、「い」を書き続け・見続けたりすると、ある点において「これ、ほんまに、いぃ?」と定点決まり切らぬようになってしまうあの感じ
P.53

いままで幾度となく感じてきた感があるこの現象ではあるが、文章にすればまさに「いぃ?」であろう。そういえば、一度も人とこの感じについて話題にした事がなかったなぁと思う。

目から入ってきたもんは、どっから出てゆくのでしょうか。
P.80

緑子の疑問。その通り、入ったら出てゆく。表現や個性となって現れるのだろう。言葉もその一つか。

もしかして、言葉って、じしょでこうやって調べてったら、じしょん中をえんえんにぐるぐるするんちゃうの
P.94

きっとそう。こちらとしては、Longmanの中を ぐるぐる してきた所。やっと抜け出せた。

巻子もパックから玉子の一個を手にとって、思い切り自分の頭にぶつけた、が、玉子の尖った先端をぶつけたらしく玉子は割れずにそのまま床に転がり、巻子は慌ててそれを追い、静止したままの玉子にしゃがんで自分の額をぶつけて割って、そのままぐりぐりと押しつけて
P.105

これにはふいた。いかにも巻子らしく玉子を縦にぶつけたのかぁ。この場合横でいかないと、おでこだし。


3日の出来事。しかしその断片の中に、過去と未来を連綿としっかり感じとることができる。
残念なのは、今が3月であるということ。舞台は真夏の暑いさなか、やはり暑さけだるさの描写力は圧巻でり、できればさらに浸るよう真夏に再読することを決めた。

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